友達の家に行く途中、ふと思い立って、道すがら、エジプト旅行から無事に帰って来られたお礼を言おうと神社に立ち寄る。
神社の鳥居のそばの道路を歩いていた時、顔の横から頭上3メートルあたりを風がさぁっと優しく吹いたので、思わず空を見上げる。風は優しく吹いたが、今朝は、雨が降ったので木の真下にいた私の頭にぱらぱらぱらっと雫が落ちて来た。
うむ。何これ。
びしょ濡れという訳ではないけれど、少々複雑な気持ちになりながら鳥居へと步を進める。
これはわたしだけだと思うが、妙な習慣がある。鳥居の前に鎮座する一対の狛犬それぞれに対してお辞儀をしてから鳥居をくぐる。
いつも通り、左の狛犬からお辞儀をする。
さて、今度は右の狛犬…けれど今日は、右側の狛犬に異変を感じた。(8番出口じゃないよ)
狛犬の右のほっぺたがおかしい?うん?何かついている?
2歩近づいて見ると、体長は6cmほどで、なかなかに成長したツノ付きの黄緑色のやつ。多分触ったら、ふにふにと柔らかそうな蝶の幼虫が無数の小さな足先で垂直な壁をそれぞれ、ちょこんと、つまんでいる。
とは言うものの、俯瞰すると狛犬の頬にべったりと縦一本にくっついている。
困ったものだ。一体どうして、この子は、狛犬のほっぺたに張り付いているのだろうか。狛犬の像を登ったところで葉っぱのご飯には到底ありつけまい。
そんなことを考えて狛犬の顔を眺めていると、よく見れば、ところどころ苔むしており、この苔が生えているが故に、幼虫は、狛犬を植物と勘違いして登ったのだろうか…。
いずれにせよ、狛犬にとっても幼虫にとっても、この状況は良いことはないだろう。
足元の棒切れを拾って、幼虫のおなかの真ん中あたりをすくいあげ、近くの木の幹にそっとおろす。
人助け?が済んでから、ようやく無事帰国したことのお礼参り。
参拝が終わり、賽銭箱に背を向けて帰ろうとした時、なにか気配を感じて振り返ると、目の前をモンキチョウが右から左にひらひらと飛んで行く。
色鮮やかな黄色が目に眩しい。蝶の軌跡を目で追う。
モンキチョウは暖かな春のイメージだ。少し肌寒く木々の葉も色づく秋だというのに蝶が飛ぶのか。と思って境内をあとにした。

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